1970/80年代
1965年11月から57か月間続いたいざなぎ景気は1970年7月に終わり、日本の高度経済成長時代は幕を閉じました。しかし高度経済成長の終焉と安定成長時代の訪れは、むしろオートキャンプにとっては追い風となりました。残業の中止などにより労働時間が短縮された結果、余暇時間が増えました。人々の価値観も仕事から余暇、会社から家族へと重点がシフトしました。こうして家族で楽しめるレジャーとして、オートキャンプを始める人が徐々に増えていきました。
1970年5月24～25日、JACは東京信濃町の明治神宮外苑絵画館前広場で日本初のキャンピングカーショー「第1回キャンピングカー＆ユーズドカーショウ」を開催しました。会場には武ボデー、星崎電機、美津濃、小川テント、エバニューなど12社がキャンピングカー、キャンピングトレーラー、テント、コンロ、シュラフ等のキャンプ用品を出展したほか、中古車70台が展示されました。入場者は約1万人を数え、マスコミは「オートキャンプ時代の到来｣と報道しました。
その年の8月、JACはフランスのブレハルで開催された第31回FICC世界大会における総会で、FICC（国際キャンピング＆キャラバニング連盟）への加盟が正式に承認されました。
1971年6月にJACは直営オートキャンプ場を開設しました。千葉県大原町に地元の南房観光から土地を借りて会員キャンプ場の第1号として開設したもので、シンプルにデザインされた芝生の場内に、仮設ながら水洗トイレや温水シャワーが設けられ、まだオートキャンプ場がどういうものか知られていない時代にモデルオートキャンプ場としての役割を果たしました。
同年7月3～4日、静岡県富士宮市の朝霧高原で「第1回日本オートキャンプ大会」が開催されました。富士山西麓に本州製紙が所有する牧草地に仮設でしつらえた会場の朝霧オートキャンプハイツに車160台600人が参加しました。そのうち120台はキャンピングカーやキャンピングトレーラーという壮観な大会でした。
1972年9月、日本で最初のオートキャンプ誌『オートキャンプ』が交文社から刊行されました。内容は、ヨーロッパやアメリカのキャンピングカーの紹介から、これから日本で盛んになると期待されるオートキャンプに対する有識者の提言、日本で出ているキャンピングカーの紹介、キャンプ用品コーナー、キャンプ場ガイド、日本オートキャンプ大会の案内、FICC世界大会参加ツアーなど非常にバラエティーに富んでいました。
1976年に埼玉県浦和市で開催された第6回全日本オートキャンプ大会には、前年設立されたばかりの中華民国露営協会から陳盛雄、黄博正ら5氏が初めて参加し、その後40年以上にわたって続く日台キャンプ交流の礎が築かれました。
1980年代になると労働時間はいっそう短縮されました。週休2日制を採用する企業の割合は、1983年に50％に達しました。また、この年に総理府が発表した「国民生活に関する世論調査」では、「今後の生活の力点を何におくか」の質問に「レジャー・余暇生活に力点をおく」と回答した割合が「衣・食・住」を抜いて第1位になりました。
自動車生産台数は1980年に1104万2884台に達して1000万台にのせるとともに、アメリカの800万8342台を抜いて世界第1位となりました。メーカー別の世界ランキングでもトヨタ自動車が第2位、日産自動車が第3位に入りました。
オートキャンプ場はそれまですべて民営でしたが、1983年に茨城県に初の公営オートキャンプ場｢常北家族旅行村｣が建設されました。また長野県松本市に公営オートキャンプ場第2号として「三城いこいの広場」が整備されました。1984年には宮崎県に公営オートキャンプ場第3号「須美江家族旅行村｣が開設されました。
この頃、オートキャンプ愛好者が親睦と情報交換を目的として集まり、全国各地でキャンピングクラブが誕生しました。オートキャンプ場もまだ十分整備されておらず、オートキャンプに関する情報もほとんど得られない時代に、キャンピングクラブがオートキャンプの普及に果たした役割は非常に大きいものがありました。
1980年3月、JACの機関紙『キャンパーニュース』が自動車週報社の竹本孜氏を編集長として創刊されました。創刊号にはキャンプショーの案内、ファミリーキャンプ大会の告知、キャンプ場やキャンピングクラブの紹介、手作りRVコンテストの開催、FICC世界大会のレポートなどが掲載されました。1980年代に入り、いよいよオートキャンプの普及を迎える時代の鼓動が伝わってきます。
『キャンパーニュース』は1995年12月に192号をもって廃刊され、翌1996年3月から名前を『オートキャンプ』に変えて発行されました。『キャンパーニュース』の創刊から40年、社会のIT化の流れを受けて2020年5月からメールマガジン『オートキャンプ』に受け継がれています。
。
（日本オートキャンプ協会メールマガジン「オートキャンプ」2022年4月）