アジアの時代
今世紀２度の世界大戦と、それに続く冷戦を経験したヨーロッパが、幾多の困難を乗り越えてひとつになる。
欧州各国の間で、ビザやパスポートなしに人々が自由に行き来し、旅行や買い物はもとより、希望する国に就職や移住することもできる。関税がなくなり、輸出入が完全に自由になる。通貨もＥＣＵという単一通貨が使用される。経済の統一を達成したヨーロッパは、すでに今世紀末の政治的統合に向かって歩み出している。
ヨーロッパのこの歴史的な統一は、キャンプの世界ではかなり早い時期に実現していた。その統一のシンボルがカルネである。ＦＩＣＣの旗のもとに集まるキャンパーに国境はない。シーズンともなればヨーロッパ中のキャンパーが北へ南へと大移動する。大量の人間が動けば経済が動き、経済が動けば政治が動く。この意味で半世紀以上にわたり「国際キャンプツーリングの環境整備」を目標に掲げて活動してきたＦＩＣＣが、ヨーロッパ統一に果たした先駆的な役割は大きい。
次はいよいよアジアの番だ。アジアからＦＩＣＣに加盟した国は１９６９年日本、１９７６年台湾、そして１９８５年韓国。６０年前、７カ国３９０人のヨーロッパ人によってＦＩＣＣが誕生したように、アジア人の手でアジア人のための連盟を生み出さなければならない。
ＦＩＣＣに学び成長した私たちアジア人は、いまＦＩＣＣという大陸から未知の大海へ向かって船をこぎ出すのである。
（日本オート・キャンプ協会 「キャンパーニュース」 1994年3月）