「韓国のキャンプ産業および文化の発展」というのが私に与えられた今日のシンポジウムのメインテーマですが、これについて論じるためには、日本におけるキャンプの歴史と今日の状況を概観するのが有益と思われます。なぜなら日本はアジアで最もキャンプが発展した国であり、そのキャンプ産業は40年以上の歴史があるからです。
日本では自動車を使ったキャンプは「オートキャンプ」と呼ばれています。キャンピング（テントキャンプ）とキャラバニング（キャンピングカー)を包括した概念です。日本のオートキャンプを紹介するに当り、最初に歴史的な背景について言及すると、およそ40年前の1960年代、日本は高度経済成長期に入りました。それはモータリゼーションの幕開けと所得の増加をもたらしました。1960年代末に登場した「オートキャンプ」という言葉は当時非常に新鮮な響きがあり、次第に多くの人々をこの新しいタイプのレジャーにひきつけていきました。
しかしオートキャンプがブームを迎えたのは1980年代以降のことです。それはまさしく高度成長が終わり、日本経済が安定成長もしくは低成長に入った時期にほかなりません。労働時間は短縮され、休日の数は増え、人々は働くことよりも余暇に価値を置くようになりました。言い換えれば、会社よりも家族を重視するようになったのです。これは現在の韓国の状況と相応していると思います。
この間のキャンプ産業への投資主体を概観すると、第1段階の1970年代は民間企業が中心となってキャンプ場の建設やキャンピングカーの生産に投資しました。第2段階の1980年代には地方自治体が投資に乗り出しました。そして最終段階である1990年代には国が巨額の投資を行い、日本国民が余暇時間を健康的かつ経済的に過ごせるように高規格のキャンプ場を日本全国に整備しました。
その結果、現在日本では約800万人が全国1300箇所以上のオートキャンプ場でオートキャンプを楽しんでいます。キャンパー、キャンプ場およびキャンピングカーに関する統計で見る限り、日本は世界有数のキャンプ大国の一つです。
このような日本の経験に基づき、韓国におけるキャンプの発展について幾つかの点を示唆できるでしょう。
現在の韓国にはキャンプが発展するためのすべての条件が揃っています。韓国はすでに高度な工業化とモータリゼーションを達成しました。韓国は世界第5の自動車生産国であり、OECD（経済協力開発機構）のメンバーでもあります。なによりも重要なのは、高度経済成長により韓国社会に中産階級が形成されたことです。中産階級はオートキャンプを楽しむコアグループであり、その発展において中心的な役割を果たします。
韓国には、日本が過去40年間に経てきたことを活用できるという大きな強みがあります。つまり韓国は日本の経験から学ぶことができるのです。たとえば皆さんが日本を訪れれば、民間オーナーが経営する中規模の快適なキャンプ場から、国や地方自治体が管理する大規模な高規格キャンプ場まで多様なキャンプ場を見ることができるでしょう。
しかし日本の経験から学ぶべき最も重要なことは、環境問題に最大の注意を払うことだと思います。キャンプ場の建設が程度の差はあれ自然環境の破壊を伴うことは避けられません。キャンプ場の建物や道路を作るために多数の木を切り倒さなければならず、それによってもとあった自然景観が変形してしまうこともあります。
このような状況に対して何も対処しなければ、多くの市民からキャンプ活動は自然環境にとって有害であると批判されることになるでしょう。そして最悪の場合には、市民からキャンプが拒絶される事態に至るでしょう。
したがって我々はキャンプ活動と自然との調和を追求しなければなりません。キャンプ場の開発は、自然破壊を最小限に抑えるようにするべきです。キャンプ場の建設のみならず、運営についても同様です。たとえばエネルギーを節約し、自然資源を大切にし、ゴミは分別してリサイクルに回すようにすることが必要です。キャンプ場の建設および運営がこのような形で行われるなら、キャンプ場はむしろ自然環境保護の前線基地ともなり、青少年に環境教育の絶好の機会を提供することになるでしょう。
以上の関連において、カピョンで開催されるFICC世界大会についてコメントするならば、今回の世界大会は、次の３つの観点から非常に有意義であると考えます。
1. カピョンは世界最大の首都の一つであるソウルから車でわずか1時間の場所に立地しています。FICC世界大会は多くの韓国人がキャンプの国際大会に参加する稀有な機会を提供するとともに、今回建設された「カピョンチャラ島キャンピング・リゾート」は大会終了後も都市住民により最適なリゾートとして活用されることになるでしょう。
2. 今回のビッグイベントは韓国におけるキャンピングおよびキャラバニングの発展にとって非常に大きなインパクトを与えることになるでしょう。すでに指摘したとおり、高度に発達した工業社会、広範に普及したモータリゼーション、成熟した中産階級など、発展の条件は熟しています。
3. 新設された「カピョンチャラ島キャンピング・リゾート」は、自然保護区においていかにしてキャンプ場を設計・建設・運営するかのモデルケースとも言うべきものです。それは人々に自然と人間の共存がどのように可能であるかを明確に示すでしょう。
私はカピョンで開催されるFICC世界大会が大きな成功をおさめ、韓国社会に新しいレジャー運動をもたらし、ひいては韓国の歴史に新しい1ページを刻むであろうことを確信しています。
（2008年7月25日､ソウル・プレスセンター）