「朝鮮」（チョソン）とは文字通り「鮮やかな朝」を意味する。そのためいつの頃か韓国は「静かな朝の国」と呼ばれるようになった。東海（日本海）を黄金色に染め上げながら昇る太陽を見るとき、この国の名前の由来を実感する。
その韓国で最も日の出の美しい町として知られる東海市において、今年ＦＩＣＣ世界大会が開催される。
開催地となる望祥（マンサン）海水浴場は、白い砂浜と豊かな松林が３ｋｍ以上も続く韓国屈指のリゾートエリア。ここに世界中のキャンパーを招いて、十日間にわたり韓国の華やかな宮廷文化や民俗芸能を紹介する。バスツアーも豊富に用意され、韓国随一の山岳美を誇る雪岳山国立公園や、古代新羅の都としてあまりにも有名な慶州を訪ねる。韓国がこの大会を「文化のオリンピック」と呼ぶ所以である。
しかし文化は新たに生み出していくものでもある。この大会によって私たちが韓国で創り出そうとしているもの、それは「オートキャンプ」という名の文化である。
東海市は現在３０ヘクタール近い広大な敷地に約１０億円を投資して、韓国初のオートキャンプ場を建設している。今回の大会が成功すれば、韓国で次々とオートキャンプ場が生まれることは間違いない。
だが文化を実践し、それを伝えるのは人である。１９９８年、韓国で第四回アジア・パシフィック大会が開催されたとき、ＦＩＣＣアジア・パシフィック委員会は、史上初めて日本からキャンピングカーを朝鮮半島に上陸させた。５台のキャンピングカーが先導車に導かれて、大会会場まで約５００キロの道をひた走ったときの鮮烈な印象が、この度の世界大会の韓国誘致につながったのである。今回の大会にはあのときに倍する台数のキャンピングカーを送りたい。
しかし元来オートキャンプ発祥の地は「東」ではなく「西」である。ヨーロッパではＦＩＣＣ会長を団長とする大陸横断キャラバン隊の編成に取り組んでいる。開会式の１カ月前に１０台のキャラバンがＦＩＣＣ本部のあるブリュッセルに終結し、ヘルシンキ、モスクワ、ウラジオストック、中国、そして北朝鮮を通って東海市に乗り込むという計画である。ダールベルク会長はすでに北朝鮮入国ビザの発給を中国政府に申請した。
ＦＩＣＣの歴史は、地続きの土地で国境を越えてキャンプしたいというヨーロッパ人の情熱によって創られてきた。そのヨーロッパ人が、キャンピングカーで海を渡った日本人と韓国の地で合流する。それはまさに「文化のオリンピック」にふさわしい歴史的な邂逅と言えるだろう。
（日本オート・キャンプ協会「オートキャンプ」２００２年４月）